2023/11/3 JDDW2023ランチョンセミナー
関西医科大学の長沼先生が潰瘍性大腸炎治療について講演してくれました。
潰瘍性大腸炎の基本治療は経口5-ASA製剤(ペンタサ アサコール リアルダ、サラゾピリン)です。分子標的薬 バイオ製剤を開始する前には 5-ASA製剤のアドヒアランス、5-ASAアレルギー 局所製剤の併用 経口ステロイドを基本のとおりに十分投与し確実に減量中止すること などを確認することが大切です
5-ASAアレルギーを呈している患者さんにステロイドを投与すると下痢 腹痛などは改善しますが発熱は続くことがあります。1つの5-ASA製剤が無効の時 CRPの上昇がない 病状が進行性でなければ 他の5-ASA製剤に変更してみることが許容されますが変更したら2週間程度で治療効果を見極めます。
局所製剤は治療の上乗せ効果があるので積極的に併用します。
外来でステロイドを投与する際 投与量は30mg/日より40mg/日のほうがより寛解導入できます。ステロイドが終了し1年以上経っていればステロイド再投与してもよいですが何度も反復投与すると治療効果が落ちてきます。特に4回以上になると顕著です。重症例で入院になった場合 外来での治療がステロイドであった時には 入院後の治療はステロイド増量より分子標的薬のほうが寛解率が高く 手術率が低下します。コレチメントはステロイドより副作用は少ないのですが効果もマイルドですので 外来で軽症、軽症よりの中等症の患者さんに投与するとよいでしょう。
ステラーラはIL12/23をターゲットとした治療ですが 炎症を抑える働きのある調節性T細胞の働きを弱める可能性があります。オンボーはIL23をターゲットとした治療薬です。Naïve T細胞からTh17細胞への分化や IL17, IL21等のサイトカイン産生を抑制します。オンボーは最初の3回は4週毎に点滴しますが投与開始後12週で効果がなくてもさらに3回投与するとそのうちの50%の患者さんに症状の改善を認めます。維持治療は4週毎に2本皮下注射しますが 維持治療中に再燃した時は再び3回点滴治療ができます。その場合の寛解率40% 改善率60%で 特に初回導入時にすぐに良くなった患者さんは再寛解導入の時にもよく反応します。副作用は 維持治療中の過敏症 特に日本人は中和抗体の出現(約30%)を認めました。