2023/12/13 リンヴォックインターネットライブセミナー

エキスパートに聞く 潰瘍性大腸炎におけるリンヴォック使用のポイント

-Real world dataも踏まえて-

 

東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 主任教授 猿田 雅之 先生が上記の演題で講演してくれました。

 

潰瘍性大腸炎患者さんが特に困っている症状として 便も漏らしてしまうような感じ:便意切迫感があります。内服薬を継続してもらうには良くなっている感じ:改善感を感じてもらうことが必要です。

大規模治験の成績においてリンヴォックはこの改善率が他の薬剤と比較してより高い成績でした。また潰瘍性大腸炎の治療目標は大腸カメラにおける粘膜治癒ですが最近はさらに組織学的治癒も目標に加わってきました。内視鏡的粘膜治癒:MES0+組織学的治癒:Geboesスコア<2.0が完全寛解とされます。リンヴォックはこの達成率が52週で Bio-naïve:30%弱 Bio-failure:20%弱です。

大規模治験の長期成績では投与開始後3年間で見てみると維持療法において30mg/日と15mg/日で同等の効果でした。

日本のおける実臨床においてJAK阻害剤3剤(ジセレカ ゼルヤンツ リンヴォック)を比較してみると治療効果ではジセレカ<ゼルヤンツ<リンヴォックでした。しかし副作用はリンヴォックが最も多く、ジセレカが最も少ない結果でした。リンヴォックの副作用は投与開始4週以内に発現することが多いです。Network meta-analysisの結果においても治療ではリンヴォックはインフリキシマブ(レミケード)を上回る成績をだしていますが 安全性では低い成績です。

JAK阻害剤1剤目が無効でも変更後の2剤目としてリンヴォックを投与すると奏功する患者さんが経験されます。リンヴォックは投与後効く患者さんには1週間以内に症状が改善します。そこで投与開始後2週目に患者さんに来院していただき病状の改善度 副作用がないかを確認します。投与開始後4週間で全く効果がなければリンヴォックからの変更を考慮します。これまで入院の重症例にはレミケード プログラフが適応でしたがリンヴォックもこのような患者さんの手術回避に役立つ可能性があります。バイオ多剤耐性患者さん 重症の患者さんにリンヴォックは適しています。高齢者にはJAK阻害剤の中ならジセレカから投与をはじめたほうがよいでしょう。有効率が高く 効果発現も迅速ですが副作用も多いので そのバランスをよく考えて投与対象を選択することが必要です。