2024/2/14 スキリージ1周年記念講演会in大分

IBDの病態と最新治療

大分大学医学部 消化器内科 教授 村上 和成 先生がご司会をされ 滋賀医科大学医学部 消化器内科 教授 安藤 朗 先生が上記の演題でご講演されました

 

CD4陽性T細胞はTh1細胞、Th2細胞 Th17細胞 Tregなどに分化していきます

Th1細胞は細胞性免疫(NK細胞、マクロファージなどによって感染した細胞を排除する仕組み)、

Th2細胞が液性免疫(血清に含まれる抗体によって病原体を中和するなどの仕組み)を

Th17 細胞は感染防御などに重要なリンパ球であり, Tregは、活性化T細胞の働きを抑制することで、生体の免疫系を負に調節しています

Th1細胞はIFNγを放出します。

p40抗体:ステラーラはTh1細胞、Th17細胞の両方を抑えますが p19抗体はTh17細胞を抑えます。

Th2細胞はアレルギーや液性免疫に関与しています。

潰瘍性大腸炎は管腔側 粘膜側から炎症がおこりTh2細胞による免疫応答が主体で形質細胞や好酸球の増多が観察されます。

最近 潰瘍性大腸炎の自己抗体:αVβ6が同定されました。潰瘍性大腸炎の90%に陽性なのに対し 他のクローン病などでは陰性です。

潰瘍性大腸炎は上皮細胞 間質細胞の免疫異常で T細胞(Th1細胞、Th2細胞 Th17細胞)、多核白血球 好酸球 形質細胞が関与しています。上皮細胞とそれを支える間質細胞に変化が起こっていて腸内細菌叢の変化は少ないです。

クローン病は粘膜下層、筋層から炎症が起こってきます。以前は代表的なTh1応答とされていましたが最近の研究ではTh1細胞、Th17細胞 マクロファージ 樹状細胞などが関与しています。食事や腸内環境などの環境因子の影響も大です。クローン病は腸内細菌叢の変化があり いわゆるdysbiosis:多様性の低下、酪酸産生菌の低下 が顕著です。

IL17は上皮細胞のtight junctionの働きを高めます IL17とTNFαはその働きが似ていますが効果はTNFαほどありません、IL17とTNFαが協働すると強い炎症が起こります。IL17をブロックすると粘膜の透過性が亢進して食事抗原がどんどん粘膜下に入ってきます。残念ながら抗IL17抗体は治験において潰瘍性大腸炎、クローン病に効果が認められませんでした。

IL23はnaïve T細胞からTh17細胞への分化、増殖を強力に誘導します またIL23はメモリーT細胞の増殖 Th細胞のアポトーシス回避、Treg細胞の抑制などを誘導します。クローン病はTh1細胞とTh17細胞の持続的活性化が病態の中心で、Th細胞は本来すぐにアポトーシスによりすぐに排除されます。

スキリージはp19を抑えることにより選択的にIL23を阻害する抗体製剤です。スキリージはIL23をブロックしてTh細胞のアポトーシスを促進することとTreg細胞の分化促進などがその有効性発揮のメカニズムと思われます。 抗薬物抗体産生が抗体製剤の効果減弱の大きな原因となっています。レミケード ヒュミラは30% ステラーラは8% エンタイビオは2~3%です クローン病治療でスキリージにより寛解導入できると長期に寛解維持できますが抗薬物抗体産生率:3%、中和抗体:0%がその理由と思われます。