20250728 スキリージ インターネットライブセミナー
未来を切り開く:小腸病変に挑むクローン病治療
京都府立医科大学 医療フロンティア展開学・消化器内科学 准教授 髙木 智久 先生が上記の演題でご講演されました
クローン病は腸管破壊性疾患で発症時は潰瘍しかないのが年数が経つにつれて瘻孔 狭窄ができてきます。そのためバイオ治療が導入される以前は海外では発症後20年経つと80% 日本人では発症後10年で70%のクローン病患者さんが手術を受けていました。クローン病患者さんの手術を減らすためには適切な時期に治療を開始することが重要です。
レセプトデータでは日本人は平均診断後4ヶ月でバイオ治療を開始しています。Top-down とaccelerated step upを比較すると外科手術なし 内視鏡的寛解 非再燃 有害事象の全てでTop-down治療が優れていました。クローン病は罹病期間が長くなる薬剤の治療効果が落ちてきます(潰瘍性大腸炎では罹病期間はお薬の有効性と関係ありません) また2剤目 3剤目とお薬がかわるたびに有効期間が短くなってきます。そのため第一剤をどれを選択するかはクローン病治療においてとても重要です。早期の粘膜治癒達成がその後の再燃 手術などの予後を改善します。そのため最近の治験では粘膜評価が治療評価に加わってきました。
ネットワークメタアナリシスのクローン病寛解導入の治療成績ではバイオ治療未使用例では レミケード>リンヴォック>スキリージです。抗TNFα抗体の次に使用する時はリンヴォック>スキリージです。1年後の粘膜治癒は抗TNFα抗体>ステラーラ>JAK阻害薬>抗IL23抗体です。小腸に潰瘍があっても臨床症状に出ないことがあります。小腸病変は予後に関与し小腸潰瘍はその後の再燃 手術を増やします。日本人の研究(SEIBO study)では小腸潰瘍への有効性は抗TNFα抗体>ステラーラ=エンタイビオでした。
腸炎の進行にはIL23の増加が関係しています。IgG抗体はFc領域を介してマクロファージなどに結合することにより細胞障害性因子が放出される可能性があります。スキリージはFc領域にLALA変異を加えることにより抗体依存性細胞障害がおこらないようにしています。スキリージは病原性Th17細胞を減少させますが非病原性Th17細胞の数には影響しません。
大規模治験の成績ではやはり大腸の方が小腸より粘膜治癒の成績は勝っています。長期の維持投与ではだんだん2次無効がでてきますが1200mg静注で治療効果が回復されます。クローン病の実臨床のデータではnaive例は1年後の有効率は80%、AT後では60%です。粘膜治癒はnaive例90%、AT後40%です。副作用が少なく長期の維持効果も高いのでクローン病の1st drugとして使用を考えても良いでしょう。抗TNFα抗体2次無効例ではステラーラよりスキリージの方が治療成績が勝っています。ただし肛門病変に対する効果は抗TNFα抗体と比較してどうかはまだ明確ではありません。