2025/9/10 IBD Expert Meeting in 大分

~Crohn’s disease~

多様化するクローン病治療における抗IL-23抗体の戦略的活用

 

大分大学医学部 消化器内科 特別教授/大分岡病院 消化器病センター長 村上 和成先生が座長をされ 山口大学医学部付属病院 IBDセンター 副センター長 橋本 真一 先生が上記の演題でご講演されました.

 

クローン病の治療で1剤目にどれを選択するかはとても重要です。1剤目が効果無い場合 寛解になるまでに費やす時間が長くなります。また2剤目 3剤目とお薬がかわるたびに再燃しやすくなります。クローン病への有効性が治療薬決定の根拠とすることが基本ですが 同時に 腸管外合併症、免疫が原因の他疾患の合併、妊娠の可能性のある女性など 個々の患者さんの特質に留意しなければなりません。病気のリスク 薬剤のリスクを天秤にかけてそのどちらも減ずる最大公約数を可能にするお薬を選択します。

クローン病 潰瘍性大腸炎の治療の目標は進学 就職 結婚 出産などのライフイベントを中断させないことです。スキリージはIL-23を抑制する抗p19抗体で、病原性Th17細胞の増殖を抑制します。また活性化したB細胞より分泌されるIL-39も抑制し 好中球の組織への浸潤も減少させます。

抗TNFα抗体が2次無効になったクローン病患者さんに対する有効性をスキリージとステラーラで比較した前向きの大規模治験:Sequence Studyではスキリージがステラーラの成績を上回りました。副作用は発熱 感染症 関節痛でした。関節痛に対しては少量のステロイドやメソトレキセートが効果があります。実地臨床ではステラーラ2次無効の患者さんに投与しても52週で50%ぐらい改善します。クローン病で症状が激しい時はまずステロイドやJAK阻害薬を投与して炎症を抑えてから抗体製剤で維持治療に移行していきます。日本人のクローン病患者さんは肛門病変を合併していることが多いのですが抗TNFα抗体の次にリンヴォックが有効のようです。抗IL-23抗体はクローン病の小腸病変に投与しても狭窄しにくいのが長所の1つです。抗TNFα抗体はクローン病に対して高い有効性を示しますが長期使用によりSLEなど副作用もあり得るのでスキリージなどの抗IL-23抗体が第一選択薬として考えても良いでしょう。