|2021年1月15日|COVID19・新型コロナウィルス感染症の予防接種と炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)についてまとめました。

新型コロナウィルス感染症はまだまだ日本を含めた世界中で猛威を振るっています。
潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)の患者さんのみならず私共医療関係者も明るい気持ちになれない毎日を送っています。

特に潰瘍性大腸炎、クローン病の患者さんは免疫を調節するお薬(ステロイド、レミケード、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラ、エンタイビオ、ゼルヤンツ、イムラン、アザニン、ロイケリン、プログラフなど)を使用している方が多く、不安な気持ちは尚更と思います。
このような状況下ですがついに日本においても新型コロナウィルス感染症にたいする予防接種がいよいよ始まりそうです。予防接種、ワクチンというだけで日本では副作用を懸念するお気持ちが強い方も多く、またこのワクチンは臨床で使用され始めたばかりで感染予防効果に加え長期の副作用は誰もわからないのが実情です。(投与直後の副作用は許容範囲内のようです)
そのため現状では、UC・CDの患者さんに新型コロナ感染症に対する予防接種をすすめるかどうかは、これまでの治験データ、短期の臨床成績を踏まえた海外の文献にその根拠を求めなければなりません(Gutに掲載されたSiegelらの文献とイギリスの消化器病学会:BSGが出した文献を参照しています)。今回はその内容を小生なりにまとめてみました。

  1. 潰瘍性大腸炎、クローン病患者さんは新型コロナウィルスワクチンを接種すべきです
  2. 現在使用中 またこれから使用される予定の新型コロナウィルスワクチンは生ワクチンでないので潰瘍性大腸炎、クローン病患者さんに基本的に安全に投与できます
  3. 新型コロナウィルスワクチン投与による副作用が起こるリスクは低いと予想されます
  4. 潰瘍性大腸炎、クローン病患者さんが免疫の働きを変えるお薬(ステロイド、レミケード、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラ、エンタイビオ、ゼルヤンツ、イムラン、アザニン、ロイケリン、プログラフなど)を使用中でも新型コロナウィルスワクチンの予防接種を先延ばしにしてはいけません
  5. ステロイドの全身投与(内服 注射)をしている患者さんは予防接種しても新型コロナウィルス感染予防効果が低い可能性があることを医師より説明してもらわなければなりません
  6. レミケード、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラ、エンタイビオ、ゼルヤンツ、イムラン、アザニン、ロイケリン、プログラフを使用中の患者さんも予防接種の効果が低い可能性があります

参考にした文献のデータは外人のデータが基になっていますので日本人では結果が異なるかもしれません。また上記のことはあくまで一般論であり副作用のリスクは個々人で同じではありませんので 予防接種するかどうかは主治医の先生などとよく相談して決定するとよいでしょう。
厚生労働省の班研究(原因不明で難治の潰瘍性大腸炎、クローン病などの診断治療の向上のための厚生労働省が主導している研究グループ)がJAPN IBD COVID-19 Taskforce を立ち上げ 患者さんや実地医家のために最新の情報を定期的に提供してくれています。
今後JAPN IBD COVID-19 Taskforceや日本の学会などから新型コロナウィルスに対するワクチン予防接種に関する声明がでると思いますのでそのさいはまたご紹介したいと思います。今回の小生なりの報告と異なる点があれば修正していく予定です。

この記事を書いた人

石田 哲也

石田消化器IBDクリニック院長

大分医科大学大学院(病理学)卒業後、米国にて生理学を学ぶ。帰国後、炎症性腸疾患(IBD、潰瘍性大腸炎、クローン病)を専門に研究、治療。
元:大分赤十字病院 消化器科部長
現在:日本内科学会認定医|日本消化器病学会専門医|日本消化器内視鏡学会指導医|日本消化管学会胃腸科指導医|日本プライマリーケア連合学会専門医|日本消化器病学会九州支部評議員|日本消化器病学会評議員