|2018年9月17日|1回プッシュで直腸からS状結腸に到達する泡状製剤

潰瘍性大腸炎が発症、再燃した時は、まずは5-ASA製剤(ペンタサ、アサコール、リアルダなど)を服用しますが 5-ASA製剤の内服では,大腸の中でも後半の部分にあたる直腸,S状結腸へは薬剤が届きにくいことが知られています。

この弱点を補うため、坐薬や注腸などの局所製剤があります。特に炎症の中心が直腸からS状結腸の場合、経口薬と局所製剤を併用するとさらに効果があがります。
また炎症が全大腸の及ぶ場合でも局所製剤を併用することでさらによくなるので、肛門痛や不快感などの出現がなければ一緒に使用してよいでしょう。局所製剤をうまく使うことで,薬剤の届きにくい直腸やS状結腸に高濃度の薬剤を届けることができ,病状のよりよいコントロールができます。
直腸にのみ炎症があるタイプの患者さんは坐薬のみの治療でよい場合もあります。

2017年9月にステロイド薬のひとつであるブデソニドの注腸製剤:レクタブル®注腸フォーム剤が患者さんに使用できるようになりました。

これまで注腸製剤としては、5-ASA(メサラジン)注腸製剤としてペンタサ®注腸、ステロイドを含有する製剤としてプレドネマ®注腸やステロネマ®注腸などの製剤がありました。
今までの注腸製剤は、薬液を効果範囲まで届かせるため、寝そべって注腸液を注入し、一定時間うつぶせでいる必要があり、面倒でした。
また1回使い切りのため持ち運びにかさばるのが問題点でした。

それに対し、レクタブルは、1回プッシュで直腸からS状結腸に到達する泡状(フォーム)製剤です。

泡状のため腸管内での薬液の保持性が高く、投与後に肛門から薬液が漏れにくいのです。さらに立位で注入するので投与が簡単です。また1缶で一週間使用することができるので 1ヶ月でも4缶なので持ち運びが容易です。

プレドネマ®注腸やステロネマ®注腸などのステロイド注腸製剤は主に局所への作用を目的としていますので内服薬よりは全身の副作用は少ないのですが、ゼロというわけではありません。
内服薬や注射剤ほどではありませんが、感染症、発疹やざ瘡(にきび)などの皮膚症状、高血圧などの循環器症状、消化器症状、浮腫(むくみ)、月経異常などが発症することがあります。

レクタブルに含まれるブデソニドはステロイドの一種ですが、局所で強力な抗炎症作用を発揮する一方、肝臓ですぐに分解されるので短期間(2,3ヶ月)の使用なら全身への作用はほとんどありません。

ブデソニドは、気管支喘息治療薬の吸入製剤(パルミコート)やクローン病治療薬の腸溶性徐放カプセル製剤(ゼンタコート)など広く一般に使用されています。このように レクタブル注腸フォーム剤は従来の注腸液や坐薬と比べると、副作用の少ないステロイドで、効果が高く、投与時の不便さがないと、2つのいいとこどりである製剤です。

1日2回 6週間程度使用します。

当クリニックでも30人以上の患者さんに投与し 特に以前に注調整剤を使用したことのある方からは「使い勝手がよくなった」と好評です。
ステロイド内服で見られた副作用もブデソニドでは患者さんから訴えられていません。

大腸の左側に炎症の主体がある方、症状を更に良くしたい方に投与するとよいと思います。レクタブル使用のさいはよく主治医の先生と相談するとよいでしょう。

この記事のを書いた人

石田 哲也

石田消化器IBDクリニック院長

大分医科大学大学院(病理学)卒業後、米国にて生理学を学ぶ。帰国後、炎症性腸疾患(IBD、潰瘍性大腸炎、クローン病)を専門に研究、治療。
元:大分赤十字病院 消化器科部長
現在:日本内科学会認定医|日本消化器病学会専門医|日本消化器内視鏡学会指導医|日本消化管学会胃腸科指導医|日本プライマリーケア連合学会専門医|日本消化器病学会九州支部評議員|日本消化器病学会評議員