|2020年7月6日|IBD|潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)と新型コロナウィルス感染症についての最新の情報をまとめました。

新型コロナウィルス感染症は日常診療に大きな影響を与えています。
2020/2月ぐらいから、世界の状況、日本の状況、マスコミの報道などにより潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)の患者様方も多くの不安を感じていることと思います。

特に免疫を抑えるお薬(ステロイド、レミケード、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラ、エンタイビオ、ゼルヤンツ、イムラン、アザニン、プログラフなど)を使用している方は尚更と思います。医師にとっても新型コロナ感染症がある中でどうやって潰瘍性大腸炎、クローン病患者さんを診療していくかはとても大きな問題です。必要な医療を的確に提供するためには医師がまず現状の認識と正しい知識を得ることが最も必要なことですが、そのために厚生労働省の班研究(原因不明で難治の潰瘍性大腸炎 クローン病などの診断治療の向上のための厚生労働省が主導している研究グループ)のメンバー、日本の炎症性腸疾患(IBD)患者さんならびにその診療に携わる実地医家の医師のために、IBD における新型コロナウィルス感染症(コロナ)に関する情報を集積・整理して提供してくれています。

その中からの情報を抜粋します。

UC,CDの患者さんは一般の方よりコロナに感染しやすいことはありません。
また、万が一コロナに感染しても重くなりやすいこともありません。

しかし、お腹の調子が悪くて、下痢、下血(肛門からの出血)、腹痛、発熱などがあり病気の経過がよくないと、コロナに感染しやすく、また重くなりやすくなります。

そのため、おなかの調子がよい(寛解期)の患者さんは今行っている治療をできるだけ続けることが大事です。
繰り返しますが、免疫を抑える治療(レミケード、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラ、エンタイビオ、ゼルヤンツ、 イムラン、アザニンなど)を行っていると心配になるでしょうが 今調子がよければ今の治療を続けて全身状態が安定して良いことが大切です。また、患者さんは自己判断で治療を勝手に中断してはいけません。心配な時は主治医の先生とよく相談しましょう。最も重要なことですが 再燃 再発がコロナのリスクになります。
病状のよくない、腹痛、下痢、下血、出血のある患者さんは、これまでと同じで個々の患者さんの病状や薬の特徴を考え合わせて少しでも早くよくなるように治療法を選択する必要があります。

これまでの欧米での観察研究から、コロナ感染で重くなり易いのは
①高齢
②合併症が多い (糖尿病 肺気腫などの慢性肺疾患、高血圧症など)
③ステロイドの全身投与と報告されています。
①②の結果は一般の方と変わりありませんね。潰瘍性大腸炎やクローン病患者さんが注意することは、ステロイド(プレドニン、ゼンタコートを含む)の不必要な長期の連用は避けることでしょう。またステロイドほどではありませんが、免疫調節薬(イムラン、アザニン)の併用にも少し注意が必要と思われます。
一方、TNF 阻害薬(レミケード、インフリキシマブ、ヒュミラ、)単独使用患者さんやIL 12/23 inhibitor(ステラーラ)使用患者さんでは他のお薬使用と比較すると重症化しにくいようです。

僕個人の解釈ですので解釈の誤りがあるかもしれませんし、症例が増加すると後日になり訂正する部分がでてくるかもしれません。
分かった時点で訂正するので、あればご容赦ください。データは日々変わっていくので今後もこのテーマについて大きな変更点があれば患者さんにご報告するつもりです。

この記事を書いた人

石田 哲也

石田消化器IBDクリニック院長

大分医科大学大学院(病理学)卒業後、米国にて生理学を学ぶ。帰国後、炎症性腸疾患(IBD、潰瘍性大腸炎、クローン病)を専門に研究、治療。
元:大分赤十字病院 消化器科部長
現在:日本内科学会認定医|日本消化器病学会専門医|日本消化器内視鏡学会指導医|日本消化管学会胃腸科指導医|日本プライマリーケア連合学会専門医|日本消化器病学会九州支部評議員|日本消化器病学会評議員