|2019年6月15日|指定難病助成制度の更新の季節となりました

今年も指定難病助成制度の更新の季節となりました。今回はこの制度について触れたいと思います。

「難病の患者に対する医療等に関する法律」が2015年(平成27年)施行され、指定難病助成制度は新しい制度に移行し2017年末で経過措置も終了しました。新制度開始以前は症状が軽度であっても申請すればほぼ100%更新されていましたが、新制度において助成を受けられる患者さんは潰瘍性大腸炎(以下UC)もクローン病(以下CD)もある程度の症状があり継続して治療を受けている方、または症状が軽度の場合は一定以上の医療費がかかっている方が更新の対象となりました。この結果全国で難病全体では15万人の患者さんが医療費助成を受けられなくなったようです。

厚生労働省の資料(平成30年)によるとUCでは認定されなかった方は31%(約44000人:不認定:19%、申請なし12%), CDでは認定されなかった方は11%(約4100人:不認定:6%、申請なし5%)でした。2019/1月の毎日新聞によると助成から外れた患者さんの平均の受診回数が半分に減ったそうです。また継続できた患者さんの中には移行措置が終了したため収入によっては自己負担上限額が上昇し、受診回数を減らしたいと希望する患者さんもかなりでています。経過措置終了後更新時に不認定になったり、自己負担額が増加したため治療を中断しその後再燃したため当クリニックを受診した患者さんが数例いらっしゃいます。その中にはより重症化して再燃し以前より治療を強化しなければならなかった症例もあります。

このようなことがあるので、個人的には軽症の方でも助成制度を継続して治療を続けるほうがよいと思っています。

最近調子のよいけど助成制度の継続が希望の患者さんに知っていただきたい事は、まず助成の対象は

  1. 原則症状が中等症以上ですので、直近6ヶ月の間に具合が悪かった時期かないか? 具体的には排便回数(UC>5回以上、CD>6回以上の時があったか?)、血便と腹痛の有無などを良く思い出してください。
  2. 軽症者は原則非該当になりますが救済措置があります。それが「軽症高額該当」です。申請日から過去12ヶ月で総医療費が33,300円を超える月が3回以上ある場合に該当します。そこで患者さんは主治医の先生に直近6ヶ月の症状を詳しく伝え、処方内容、処方期間、検査内容、検査時期などをよく相談して可能なものは調整するとよいかもしれません。但し軽症のかたで更新しても入院しないかぎり経済的なメリットを得ることができない患者さんがいるのも事実です。

症状がなくて調子がよいのは本当に喜ばしいことですが、その結果助成制度を受けられなくなり受診回数が減ったり、再燃する患者さんがでてくるのは憂慮すべきことと思います。

この記事のを書いた人

石田 哲也

石田消化器IBDクリニック院長

大分医科大学大学院(病理学)卒業後、米国にて生理学を学ぶ。帰国後、炎症性腸疾患(IBD、潰瘍性大腸炎、クローン病)を専門に研究、治療。
元:大分赤十字病院 消化器科部長
現在:日本内科学会認定医|日本消化器病学会専門医|日本消化器内視鏡学会指導医|日本消化管学会胃腸科指導医|日本プライマリーケア連合学会専門医|日本消化器病学会九州支部評議員|日本消化器病学会評議員